まめいろん

きのおもむくままに

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26 December 2021

人の本質 2

人やその本性とは,いったいどのように知れるのだろうか.

赤ん坊や小さな子が示す行動を観ることによってか. 脳神経の繫がりを部分的にシステム的に解きほぐしていくことによってか. 他人との関係を解きほぐしていくことによってか. 国や文化の違いを観ることによってか. 歴史を紐解くことによってか.

人の本質といってもどういう切り口で知りたいかで,知れることも違うだろう.

私の関心は以下のいずれかである. 幸福であること. 互いによい働きを及ぼしあう社会で生きること. 不幸でないこと.

おそらく私は,人間というものをよく理解した上で,人が作る集団の振る舞いを表すのに適した単純なモデルに人間を落とし込み,またそれらの相互作用をモデル化し,かつ環境を含めて,システムとして安定していて人間本来の性質にあった状態をどうすれば実現できるのかを知り,それを活かす方法を知りたい.

退屈でもない定常状態,あるいはいつか破綻するにしても,可能なかぎり長く,そして無理なくリセットできるにはどうすれば良いかが知りたい.

マルクスやマックス・ウェーバーが考えたように,今の資本主義と民主主義の檻に閉じ込められて争い合う以外の道がないのかを,確からしいシステム理解に基づき知りたい.

微分方程式を解析的に解けない時に数値計算を行うのと同様に,論理で辿りつけない複雑系をシステム論と数値計算の力で近づけないだろうかと思う.そして情報通信の技術が果たすべき真の役割もそこから見えてくるのではないかと思う.

単純なモデルに落とし込むときに,幸不幸に関わる人間の本質が抜け落ちてはならない.また自己完結でなく相互作用についてもそれがいえる.集団は小さなものから,大きなものまでさまざまである.

まず幸不幸に関わる要素を漏らさないよう人間を可能なかぎり簡素化してみたい.材料はさまざまである.スピノザは人間の本質を自己保全であるとした.ショウペンハウエルは不幸を苦悩と退屈,そしてそれらを招くねたみや野心とした.ラッセルは外部への純粋な興味が幸福の鍵だといった.脳科学は知情動という三つの要素を提示した.脳神経科学は遺伝と環境どちらも重要であるといい,われわれが生物学的にもつ情動回路について多くの事実を蓄積した.

哲学だけでは根拠に乏しいし,脳神経科学だけでは現実の世界を大局的に捉えられない.私は次のように考えるのがよいと思う.哲学的に重要と思われる要因(ねたみ,野心,興味,喜び,愛,尊敬,無気力,攻撃性)を設定し,それぞれに対し,対応する脳神経科学的知見を紐づける.そしてどのような入力に対して哲学的要因が発現し,それが外部にいかなる働きを及ぼすかを整理してみたい.要因は知情動の枠組みに分類するのがわかりやすく直感的に正しそうだ.

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