きのおもむくままに
記事一覧対称群は任意の置換あるいは,すべての自己同型全単射写像を含んだ集合であり,群の母体だろう.だからその内部構造〜部分群について理解していくことが,実際の興味に繋がった群のより深い理解に繋がるだろう.
内部構造を知るには,群表をみていくのがよいだろう.前回定義した置換を用いると,S3の群表は以下のようになる(数独的で結構いい暇つぶしになる).
(手続き)
この中で自己同型な部分群を抽出すると以下五つである.
\[\{0\}, \{0, 3\}, \{0, 4\}, \{0, 5\}, \{0, 1, 2\}\]いろいろ気になるところはあるが,二つ重要と思えることがある.一つは部分群の位数が ${1, 2, 2, 2, 3}$ であり,もとの対称群の位数の約数になっていることである.これは「代数的構造」(遠山啓)を見てネタバレしてしまったのだが,定理である.
定理:ある群の部分群の位数は,その群の位数の約数である.
部分群を見つけるための強力な道具だと思う.ちなみに逆は成り立たないのだろうか.もう一つ気になるのは,群表の対称性である.合成写像が可換かどうかは,実用上もかなり大事ではないかと思う.たとえばあみだくじに戻ってみる.
あみだくじのプロがいるとする.それはおそらくこういう人だろう.人数が集まったらその人数に対応する位数をもつ対称群を思い浮かべる.それぞれの人を記号で紐づける.全員が上側に名前を書き込んだら,記号の順列を記憶する.次に下側に,例えば一人当たりになる印がある場合は,当たりにしたい人が当たりになるような置換を一つ心に決める.(なるべく偶置換にする.この理由はあとでふれる.全員に思うような役割を割り当てたい場合にはその置換は自動的に一つに定まる.)置換が定まったら,あみだくじの下側を折って当たり印を隠す.次に線を引くのだが,これは群表を思い浮かべながら瞬時に行う.まず最初は目的とする置換を群表の中から一つ定める.その置換を作る置換は行と列の置換をみれば直ちに定まる.列の置換に対応する線を下側から引く.次に行の置換に対応するものを再び群表から選び,また列に対応する線を引く.これを繰り返せば,目的に合うような十分複雑な線が瞬時に引ける.ただ非可換の場合は,あみだくじの下側から順に線を引いていくことになる.だから群論を熟知した者がいる場合は,いくら早く書いたとしても,不自然に思うかもしれない.だがこれは可換群となる部分群に絞れば隠すことができる.・・・だが同じプロがいたら気づくかもしれない.偶置換のパターンを繰り返していることに.
さて,そろそろ群の全体像を知りたくなってきた.天下りではあるが,次はこれまでの数学の集大成(百年以上の歴史が詰まった分類があるらしい)を表面的ではあるが上から整理してみよう.
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